金庫株は高い。

2020.09.08

今回は非上場企業の同族役員が退任するときに自社株を会社に売りたい話です。

 

先日ある会社の会社概要を見ていたら、資本金3,315万円というのが気になりました。丸くない数字。その揃ってない数字に違和感を感じて調べてみました。

 

なるほどわかってきました。

 

金庫株です。平成13年の商法改正により、自社株の自由な買い戻しが可能となり、以前のように回数、時期、取得目的などの制限はなくなりました。

 

つまり、その会社はなんらかの理由で少数株主の自社株を買い戻したのだと推測できます。その時に資本金(純資産)を切り崩した残骸が”汚い数字”として残ったわけです。

 

この金庫株ですが、名前からして隠し財産のような隠のイメージがあるのですが、分散した株式を集約させて後継者に集中させることで円滑な事業承継に期待を持つことができます。

 

しかし、この金庫株をさらに調べていくと、この金庫株というのがやばいんです。

 

売却した株主にとっては曲者なんです。

 

自社株を会社に売却しようとするのはだいたい前代表取締役でしょう。他役員であれば代表であるオーナーが買い取るケースがほとんどです。

 

でも、世の中には大株主がド派手な解任で辞任するケースは珍しくない!?

 

そうです。代表取締役が解任されて辞任した後、株を売却するケースは珍しくありません。ダイワハウスの5代目の長男の解任はあまり知られていませんが、委任状争奪戦の解任劇で有名な大塚家具や106億円を賭博で溶かして背任行為で実刑を受けた大王製紙の元会長の井川意高氏は有名です。ちょっとケースは違いますがホリエモンもそうです。

 

さて、彼らは代表取締役を辞任した後、株はどうしてるのでしょう。

 

はい、全員きれいに売却してます。

 

それは上場企業だからできるのです。売却した所得にかかる税金も20%前後です。

 

それでは、譲渡制限のある非上場企業の自社株を同族に当たる株主が会社に売却した場合どうでしょうか。

 

もともと世間は上場企業の人事にしか興味がないので、非上場の人事など知られることも少ないのですが、非上場の株でも評価額がとんでもなく上がってるんですけど簡単に株売れますか?

 

売れます。基本的には。

 

ただし、売却側が大変なことになります。

 

総合課税(みなし配当課税)として最大55%がかかります。

55%です!

 

 

例えば、将来の事業承継に困らないように、先代社長である父親がコツコツと長男に贈与していったとします。非課税内で1年に2株づつ30年かけて60株を移していきました。30年たって、後継者がなんらかの理由で退任したとする。

この株は相続ではない。毎年、少なからずとも贈与された株です。

 

これ会社で買い戻したら55%後継者にかかってきます。

 

それでは先代社長に買い取ってくれって30年かけて移した株を戻して税金も払うって、こんなバカげた話はないでしょう。

 

そのほとんどは、塩漬けになってます。

 

そりゃそうです。仮に1,000万円の評価額の株を会社に買い戻して450万円しか入ってこないのですから。

 

この場合、55%の超高額な納税覚悟で売却するしか方法はないのでしょうか。今のところ会社が自社株買いをする場合はこれ以外なさそうです。

 

今回のケースは相続以外で取得した自社株を売却する場合とは基本的に違いますが、相続に限定する場合は特例があります。

 

相続が発生してから3年10ヶ月以内に相続財産である株式を発行会社に譲渡すれば総合課税で55%かかるところを20%にしてもらえるという特例です。

 

相続財産としての株を一旦兄弟で均等相続させて会社に買ってもらうというスキームです。

 

例えば、相続財産である自社株が1億円。相続人の子供が二人。長女と長男で、長男が後継者。

 

長女は経営に参画する気はさらさらないので、一旦は5,000万円を相続し、3年10ヶ月以内に会社に売却すれば本来2,750万円かかるところが、1,000万円で済むということです。

 

どちらにしても、剰余金(累積されてきた税引き後利益の合算)が十分にあれば成立する話にはなるのですが。

 

いざとなったら株は会社に買い戻す!と思ってる後継者の方、もしいらっしゃったらご注意あれ。

 

そもそももらった自社株ですよ。

 

次の後継者に渡していくのが筋というものでしょう。