里山は経営課題の宝庫

2020.11.10

経営者で登山がお好きな方は珍しくありません。

かく言う私も百名山制覇とは行きませんが10分の1くらいは登りました。

登頂した時の達成感や頂上でいただくコーヒーは格別です。

でも、登山が経営に活かせるスキルはと言うと、必要最小限の準備と計画でしょうか。

私がオススメするのは里山歩きです。

トライ&エラーの疑似体験

経営者が会社で直面する課題の宝庫、トライ&エラーの疑似体験ができるのが里山にあります。

例えば、百名山のような人気のある山ですと、踏み固められた道があります。迷う心配はありません。また、行楽日和などは行き交う登山客も多いので不意の事故や水分、食料も(頼ってはいけませんが)何とかなります。

ところが、里山になってくるとそうはいきません。

基本的に里山と言うのは、標高がある風光明媚な有名山ではない地元の人しか知らない山です。道といえば、一般道路が開通するもっと前に集落に住む人が生活道として使われていたいわゆる「古道」なので崩落してたり途中で消えていたりします。人が入る理由がないので他人と遭遇する事はないです。むしろ山中で会ったらお互いビックリします。

遭難の可能性は低いと思われますが、低山だと舐めてかかると痛い目に合うのが里山です。そして、野生動物の寝ぐらなので危険がいっぱいです。

ですから何かあった時のために家族に「〇〇の山に行くので15時までに連絡がなかったら捜索してほしい」くらいの対策は必要です。

余談ですが一度山中で人と遭遇したことがありました。私が気づいて声を掛けるか早いかサッと行方をくらましてしまいました。おそらく竹の子泥棒だと推測されます。

 

それではなぜそんな里山がおすすめなのか。

  1. 自分で発見する楽しみ
  2. 迷った時の思考を鍛える楽しみ
  3. いにしえの古道を歩く楽しみ
  4. なにが起きてもおかしくない緊張感を楽しむ

 

こんなところでしょうか。

このうち特に醍醐味と言えるのが、判断に迷った時の思考を鍛えることができるのが里山です。

 

迷った時の思考を鍛える

なにも仕事から離れてわざわざ課題解決の疑似体験する必要はないとお考えの方もいらっしゃると思います。そうですよね。でも、日常で迷って失敗して振り返って反省する場面っていったいどれくらいあるでしょう。「衝動に駆られて買って帰ったら興味がなくなった」くらいの反省は日常茶飯事ですが、もっとリアルに身近で体験できるのは里山だと思います。仕事での判断や危機に直面した時のメンタルと思考を鍛えておく必要があると思うのです。

前述しましたが、今は使用されていない古道です。長年の放置で草や樹木が密集して突然道が消えていることや台風で崩落していることがよくあります。その時にどっちに進むかどうやってルートをとるか悩みます。この択一の判断が明暗を大きく分けることがよくあるのです。

今は山の中でも使えるGPSアプリが大変便利ですが、不測の事態に備えて私はプリントアウトした地図とSilvaのコンパスを使います。かと言って、地図に全幅の信頼を寄せるのは危険かと思います。国土地理院の地図どおり進んだ果てに一歩先は断崖絶壁と言うこともありました。山の起伏や傾斜も判断材料の一つにしながらルートを決めます。

山で迷った時、自分の現在地を知ることから始めますが、仕事でも先行きの不安や状況の選択に迷った時は今現在自分や会社はどうなっているのか知る基本のようなものです。改めて山で実体験する事でその重要性を再確認できます。

 

迷った時のシミュレーションを里山でやってみる

さて、迷った時のシミュレーションです。

例えば、二股に道が分かれています。

左の道は幅員が狭く草や木が茂って鬱蒼としています。右の道は幅員も広く拓けた感じです。

あなたはどっちを選択しますか?

よほどの天邪鬼でない限り、右を選択するでしょう。

右の広い道を選択したあなたはズムズムと進んでいきます。

ところが200mほど進むと突然道が消えます。

あれ?やばい。どうしよう。

山道で200mと言えば結構な距離です。

引き返すか進むかの選択に悩みます。

引き返すにはかなりの勇気がいります。

ここでは引き返して二股の起点にまで戻ると言うのが山で迷った時の常識なのですが、このわずか200mの距離がとてつもなく長く感じられ引き返すのをためらいます。

 

天国と地獄を分ける選択

引き返すのを諦めそのまま樹木で覆われた鬱蒼とした道無き道を突き進みます。

行けども行けども道らしきものは見つからず、焦り始めます。

一刻も早くこの状況から抜け出したい。

熊などの野生動物との遭遇は絶対に避けたい。

そう思うと恐怖と焦りで、「下れば下山できる」と思ってしまいます。

そして急斜面をどんどん下ります。

木の枝を掴んで滑るように下ります。

川音が聞こえはじめました。

「やった助かった」

この川に沿って下れば下山できる。

そのまま川の脇を歩いていきます。

もう少し下れば山の恐怖から解放されると希望を持っていた目の前に現れたのは、

 

滝です。

 

数メーターの落差に一瞬ひるんでしまいますが、恐怖と焦りに支配された人間のとる行動は恐ろしい。

勢いつけてジャンプ!

そして落下とともにボキッ

左足を骨折しました。経験したことのない痛みで全身が震えます。

大声で助けを呼びますがここは人気のない里山。

そしてその夜をその場で過ごすことになる。

次の日も救助が来る訳もなく。

骨折した足で下山はできない。

これが遭難の典型的なパターンです。

 

遭難には前兆がある

会社でいうと遭難は倒産です。多くの人に迷惑をかけます。遭難も倒産も突然なるわけではなく、前兆があります。迷った時に選択した行動。その選択が間違いだと気が付いた時に、素早くその場から撤退して元の場所に戻る勇気。なぜ間違った選択をしたのか、間違ったと気が付いた時になぜ方向修正しなかったのか。

 

迷う(失敗)の原因を考える

山で迷うケースにはもう一つあります。

周りに注意して道を見ていない。

尾根は歩きやすく景色もいいし、肌に触れる風も気持ちいいので注意散漫になりがちです。そんな時に道を見落としてしまって迷って焦ることがあります。会社を経営するのも事業が順調にいっている時は気が緩んで無駄な投資や重要な選択にも関わらず適当にしたり他人に任せたりします。

迷うケースがもう一つ。

複数で山行した時に起こるケースで、指揮進行が2頭体制になることです。迷いだすと全員が冷静な判断に欠けてますから、声が大きかったり、他よりも強引さが目立つメンバーの意見が優先されます。もちろん根拠や正確なデータもないのに何かにすがりたい一心で他人の判断に頼ってしまう。そこで迷い始めたら疲労も重なり責任の所在を追求し始め、やがてそれが責任のなすり付けになってしまいます。経営上でもよく見られることです。人間の思考や心理は山の中でも会議室でも同じです。

 

さて、このように仕事を離れてみじかな里山でできる自己判断のトレーニングを紹介しました。

とにかく危険だらけなので、細心の注意が必要です。

野生動物やマダニ、ヒルなどの吸血生物、さらに蛇などはさることながら、地元の住民の方への配慮は非常に重要です。町内会長や長老に事前に声をかけて「ハイキングのため山に入る」目的をしっかり説明するなどして、不審者に思われない気遣いが必要です。これを怠ると下山して車を停めた場所に帰ってくると地元住民の何人かが車の前であなたの帰りを待っているでしょう。怖い顔して。

ま、ここまでして我が身を危険にさらす必要があるのか甚だ不思議ですが、

「孤独と緊張のプラネット」という

非日常を体験できて、

判断力を養える「自分で作るイベント」は、

やはりおすすめです。