身内の敵に気をつける

2020.11.25

人間は誰しも、順調に物事が運ぶと、つい、有頂天になってしまうものです。どれほど慎重で優秀な人でも、かならず心に隙ができて、慢心から失敗に至ることが多いように思います。とりわけ、目の前に対峙する敵よりも、背後の身内に気をつける必要があります。ここに配慮が欠けていると足許をすくわれることがあります。かつての戦国武将も似たような失敗を記録に残していますので、私たちの転ばぬ先の杖としたいものです。

信長の失敗

本能寺の変の原点になったのが、越前国主・朝倉家の討伐だと推測してます。これによって信長は多くのものを失いました。朝倉家の庇護にあった第15代将軍足利義昭による疑心、同盟・浅井家との対立、信長の逃亡による信用失墜、比叡山延暦寺の焼き討ちによる不信、そして朝倉家の客将だった明智光秀の謀反に繋がったと考えます。

朝倉討伐の失敗は大きく二つあるとみています。まず一つは、朝倉家と浅井家の良好な関係は長く、福井と北近江の地政的にみてもお互いにメリットがありました。織田家と浅井家の同盟は期間は短けれど、信長の妹、お市を浅井家に嫁がせていたこともあり、長政が裏切ることはないと信長はみていましたが、脇が甘かった。この長く良好な同盟は義景と長政の関係ではなく、先代から続いてきた「家と家」の結び付きという配慮に欠けていました。信長は朝倉討伐を足利将軍に対する非礼を大義名分とし、先代の浅井長政の父である久政への配慮と忖度を欠いてしまった。そのことが、浅井久政の逆鱗に触れ、家臣多くが久政に同調し、反撃に出たのです。その結果、信長は尻尾を巻いて逃げ出すことになり、生き恥を晒すことになります。

そして、二つ目は、前述しましたように、朝倉討伐で失うものが多かったということです。このように行動に移す前、少し想像力を逞しくすれば、自分に武があるか、そうでないかは、分かりそうなことですが、15代将軍足利義昭を奉じて、上洛したころの織田信長はまさに絶頂の時代でした。疾風怒涛のさなかの人間は些細な注意も見落としてしまう危険があるのです。結局、浅井家とは姉川の合戦で勝利はしましたが、本能寺の変へのカウントダウンはここから始まったと、私は考えます。

私の失敗

とある後継者のご依頼で案件を進めておりました。第1案とその案が予想外だった場合の代替案。そして、お見積もりをして、契約書をお持ちいたしました。するとそこへ、経理ご担当の方より「これは会長の承認済みですか?」後継者さんによると、全権まかされているので自分が決定するの一点張り。しかし、金庫番の経理ご担当は会長を全面支持されていますので印鑑は出しません。完全に私の失態です。権限が後継者に移譲されているのと、周辺に忖度するのは違います。見積り前の段階で「ご挨拶しておけば」と激しく後悔しましたが、時すでに遅し。周辺の人間関係をもっと深く観察しておくべきでした。結局、契約とはなりませんでしたが、いい勉強をさせて頂きました。

 

源義経の失敗

源平争乱の時代に彗星の如く現れたのは源義経でした。義経は大将でありながら、中軍や後方に位置することなく、常に先頭に立って武者たちを叱咤激励しました。聡明で行動力もあって、アイデアもある。今でいうやり手のビジネスマンでしょう。源平の合戦の舞台となる一の谷では、この当時、武士の合戦は正々堂々となさねばならない暗黙のルールがありました。熟練された弓馬術、闘技と、人数の多寡によって勝敗が決まるものとされていました。しかし、義経は卑怯ともいえる鵯越で有名な奇襲攻撃をかけ、源氏に勝利をもたらしています。この源平合戦の勝利によって、兄頼朝より褒めてもらえると期待した義経でしたが、頼朝にとってこの勝利は喜ばしいものではなかったのです。今回の合戦は義経の単独の判断による勝利。つまり兄、頼朝の勅命ではありませんでした。器が小さいと言われればその通りなのかもしれませんが、関東武者たちによって擁立されている、いわば神輿のような存在の頼朝の心中を読んで忖度することができなかった。若くて、才能のある義経は大人の世界を予見することができなかったばかりに、兄、頼朝によって消されています。

 

上司と部下によくある話

周りの身近な忖度や配慮を欠くことで、人間関係がギクシャクしたり、会社に居づらくなったりしたことは、社会人であればそんな経験は誰でもあるのではないでしょうか。

例えば、上司と部下がいます。上司から引き継いだクライアント。「あとは任す」と言われたにも関わらず、上司が担当していた頃より関係が良好で、売上げも上がってきたりすると、上司は複雑な気分になります。任されたので自由にやっても良いとの部下の判断で関係をより強固に繋げての結果です。なんで悪いの?器の小さい上司となりがちですが、できるビジネスマンは上司にまめに報告したり、周りのスタッフにも適度に仕事を振ることで、あなたのおかげで、という「花を持たせる」という演出を忘れません。非効率なのはわかりますが、周辺に忖度し、さりげない演出が人生をうまく乗り越えるコツというのを歴史が教えてくれています。