空けない夜はない

2020.11.30

成功するのはそうむずかしいことではないが、失敗からの回復は容易ではない。とりわけ、世間のみなから軽蔑され、自分でも自分を軽蔑しなければならないような道義的な失敗の場合は。

ロードジムを評して 池澤夏樹 

 

このハゲ〜〜〜

2017年6月。今から3年と約半年前。偶然、テレビから耳に入ってきた罵声に自分の耳を疑った。よくあるドライブレコーダーに録画された「ヤンキーのおもしろ動画」かと思ったが、紛れもなく国会議員で現役の豊田真由子の声だ。「このハゲ~~~」という罵声から始まる「ち・が・う・だ・ろ!」「違うだろ!」等々のヒステリックじみた、いや、狂気すら感じさせるような、秘書に対する罵倒の連続である。

さらに恐怖を感じを受けたのは、豊田真由子本人が歌いながら、

「(秘書の)娘が、顔がグシャグシャになって頭がグシャグシャ、脳ミソ飛び出て、車に轢き殺されても……そんなつもりがなかったんですぅ〜で、済むと思ってんなら同じこと言い続けろ〜〜♫」

自分が言われているわけでもないのに、自分の家族を冒涜されているようで聞くに耐えれなかった。

そこそこ、美人?でエリート議員が叩かれて、崩落するする絵は庶民にとっては、格好のスッキリ材料だ。正直、私も「ザマァーミロ」と楽しそうに思わなくもなかった。

 

堕ちたエリート国会議員

情報バラエティー番組でみた彼女は、少しふっくらした感じで、以前の印象とはガラッと変わっていた。話の内容もわかり易くて、むしろ滑稽なおばちゃんのように微笑ましく感じた。その内容にふれ、ドキッとしたことがあった。彼女は当時、報道されたことで自民党と秘書に迷惑をかけたことを理由に離党し、その後無所属で出馬するが落選。その後、精神を患い、入院。引き篭もって自殺を考えるような生活をしていた。

 

最初の報道で私はショックを受け、精神科に入院。体重は12キロ減って、意識のあるときは、ずっと死ぬことばかり考えていました。なんとか踏みとどまれたのは、子どもたちに「自分の存在が、母を生につなぎとめるほどの価値を持たなかったのだ」という痛みを一生抱えさせるわけにはいかない、その一心からだったと思います。

婦人公論.jpより抜粋

 

世の中に役に立ちたい一心で、政治の世界を目指し、一生懸命やってきた。自信のない本当の自分。世間がみている虚構の姿。本当の自分と世間の虚構に乖離が生まれて、そこに出来上がったのは慢心だ。それが、態度や言動、そして吊り上がった眉毛に象徴されている。

 

1通のメールがどん底から救った

彼女は2009年の新型インフルエンザの世界的流行の時に、外交官として最前線で対処にあたっていたので、感染症対策への知見と経験があった。

そして、このコロナ禍において、新型コロナウイルスに関する正しい知識を持ったうえで高齢者や園児に接してもらいたい一心から、社会福祉法人の職員向けに対処法を書いた。

同じものを、親しい友人が経営する会社内でも使ってもらえたらと思いメールで送ったところ、「これ、わかりやすい!」と周囲の方に広めてくれて、それがたまたま情報番組のプロデューサーの目に留まり、番組からの出演依頼となった。

 

所感

人は誰でも失敗をする。その失敗にどう向き合って、自分と対峙できるかが重要なのであって、彼女が、どういう経過を辿ってここまでやってきたのか、興味があったので、少し自分なりに調べてみた。

当時の離党直後の謝罪会見を観ると、「あ、この人全然反省してないわ。言い訳ばかりしてる」率直にそう思った。3年という月日の中で彼女自身は悩み、苦しみ、内省し、考えたのだと思う。反省しているかどうかは本人が決めることではない。公共の場に出てきて、発言の機会を与えられたことが、反省していると世間が認めたということなのだろう。

もう十分社会的制裁は受けたと思う。彼女本人は二度と出馬はしないと言っているが、人のために貢献できる場は多くあるはずだ。彼女が持つ知見と経験を通して、社会に向けて、「道義的な失敗からでもやり直すことができる」という証明を打ち立ててほしい。