家族憲章が必要なわけ

2020.11.18

今、日本は「経営者が70歳を超えて後継ぎが決まっていない中小企業は127万社」全企業数の3分の1です。しかもこの127万社の約半数は黒字会社。もしこれらの黒字会社が後継者不在により、事業承継できずに廃業するとなると失われるGDPは22兆円と言われています。このデータは3年以上前のものなので、今の世の中を考えると状況はさらに深刻です。

もちろんこの数字は登記されている企業を対象に中小企業庁が行ったアンケートの結果です。この集計の中には商店街の八百屋さんのような小規模事業者も含まれています。後継ぎが決まっていないと言う事実を踏まえて、後継者不在を大きく3つに分類すると、

  1. 後継者不在(息子が不在で娘が承継拒否、嫁婿は不適格)
  2. 後継者不在(息子はいるが承継を拒否)
  3. 後継者不在(息子はいるが何らかの理由で決められない)

 

息子が不在で娘が承継拒否、嫁婿は不適格

よくあるパターンです。娘が後継ぎを拒否する以上、娘婿に白羽の矢が立つわけですが娘婿が経営者に相応しいかどうか、またお義父様と相性が合うかは別の問題です。あくまでも私の主観なのですが、このケースでうまくいっているところを私は知りません。外見は問題はなさそうですが、経営者と娘婿と別々に飲みにいったりするとお互い罵倒しあってます。私の周りで似たようなケースが2、3ケースどころではないので全体で見たら娘婿問題で悩んでいる経営者多いのではないでしょうか。

娘婿にしてみれば望んでいないところにお仕着せで頼まれた職務。熱意など入るわけもなくやらされてる感満載です。または権威だけ借りて踏ん反り返ってる。その様子を見て先代経営者は不満を募らせます。しかし、一度任せたものを取り上げれば事態はさらに悪化します。娘の父と娘の旦那。男どうし。結局は相性の問題なんでしょうけど、将軍とポチの関係ならうまくいくんでしょうけど、これじゃ会社はうまく行かないですね。

娘婿問題でうまくいっているケースもあります。娘が会社を継いで、娘婿は常務と言う立場であえて旦那が一歩下がってサポートするケースです。直接は存じ上げませんが、大阪で「突っ張り棒」を製造されている会社です。三代目社長で、もともとは3姉妹の末っ子で事業承継には興味がなかったと本人は話されていますが、経営者としての才覚もおありで、なにより、旦那さんの器量の広さと深さに感銘します。

 

息子はいるが承継を拒否

このケースもよく見かけます。皮肉なもんです。親は子供を将来の経営者に育成するために良い学校に通わせて、大学院まで行かせて、おまけに留学までさせた。そこで一流企業に就職して3年経ったら帰って会社を継ぐ約束だった。居心地いいし、結婚して都内にタワマン買ったもんだから、もう奥さんは旦那の田舎で中小企業の経理なんか、考えただけでも吐き気がするそうです。どちらかと言うと後継者候補の息子よりも奥さんが断固拒否してます。そのままうまくい場合とそうでない場合はやはりあります。一流企業でタワマンに住んで順風満帆、そんな時に限って「父親が急に倒れた。すぐに帰って来い」と連絡が入ったりします。

急な環境の変化で奥様の動揺も隠せませんが、旦那さんや親族の説得もあって最後は田舎に帰って会社を継ぐようです。やはり血は水よりも濃いと言いますが、血の繋がった親子の絆は、他人である奥様との関係よりも深く濃いと言うことなんですね。

 

息子はいるが何らかの理由で決められない

127万社の後継者不在企業の中には、「優秀な後継者候補は複数いるが決めれない」と言うのも含まれています。兄弟や親族のうちで、誰が後継者となるか、ということです。

歴史上、後継者をめぐるトラブルの大半はこれです。ほとんどは過半数の株を持つ経営者である父親が後継者候補を決定するのですが、見逃せないのは、その妻の意向です。いくら父親が「この子に跡を継がせる」と言明しても、妻(母親)の支持がなければ、家庭内不和が生じてしまいます。ましてや経営者である夫の弟や甥といった親族に継がせる場合は、それまで夫を支えてきた妻の存在が、その成否を大きく左右することになります。

この問題を避けるために、「兄弟や親族を競い合わせて、その中から有能な人を後継者に指名すれば良い」と考えるかたもいらっしゃいます。しかし、私の経験からすればこれは大変危険です。なぜなら足の引っ張り合いになったり、非協力的だったりして同調不和に拍車がかかります。なにより同族の争いで迷惑被る社員はたまったものではありません。

さて、この場合はどのような解決策があるでしょう。残念ながら、この問題を解決するにあたって正解はありません。

唯一、試してみる意味で有効な方策は親族間が取り決めたグランドルールを作る。このルールがいわば「家族憲章」なのです。まず、家長である経営者が後継者候補を指名します。誰がいつ就任するのかをはっきりさせることが重要です。

そして就任期間中(例えば1期2年)に指名された後継者は、

  • 何をはじめたか
  • 何を変えたか
  • 誰を育てたか

この3つを成せるかどうかを親族どうしが注目し、評価します。

と、口で言うのは易し、実行するとなると想定外のことも起きると思いますが、「同族会社」にして「同族」が同一の目的に一丸となって前進している時に限っていえば、結束を保って、大きな成果をあげることができると思います。

 

やはり親族間の明文化されたグランドルールは重要

成し遂げたあと不和が生じて収拾がつかなくなるのは歴史が証明しています。源頼朝や足利尊氏も幕府を作ったあと実権の握り合いで兄弟どうし殺し合いに発展してます。時代が違いますから殺戮とはなりませんが、親族どうしの交流がなくなり、終結のない冷戦が続くことも考えられます。

このような親族どうしの争いを防ぐために必要なのは親族の想いを明文化すること。それが「家族憲章」なのです。