2020.08.12
同族経営の軋轢の中で、親子、兄弟、義兄弟の問題があります。
ここでは、養子に入っていない義兄弟について語りたいと思います。
正式に養子に入った娘婿が後継者となって、成功しているケースはよくあります。
パナソニックや鹿島建設、スズキ、例を挙げればキリがないほど多く存在します。
最近では飲食業界で勢いのある若手経営者も娘婿です。
もともと日本の商習慣では商家に娘が生まれると赤飯を炊いて祝ったと言われています。
それは、血の繋がった息子は良し悪しを選ぶことができませんが、娘の結婚で得る息子は
選択することができるからです。
そのように外部から優秀な婿をとって経営を任せると言う独特な商習慣が芽生えました。
先代が後継者候補がないので娘婿に養子として迎え入れ、自社株も含めて相続財産を託す場合は問題ありませんが、
血の繋がった息子と娘婿が経営に共存する場合はちょっと事情が違ってきます。
私には姉の旦那で、社内では上司に当たる義兄がいました(ハンプティダンプティにそっくり!)。
養子ではないので、娘婿ではあるのですが相続権はありません。
同族経営に従事してる関係者や事業承継で苦労されてる後継者には、
この関係を聞いた瞬間、何か特別な空気を感じるのではないでしょうか。
義兄と私がお互いサラリーマンなら良い関係が築けたと思います。
しかし、同族経営となると全く様子が違ってくるのです。
義兄と私は性格も価値観も、人生観そのものが全く違います。
もう少しわかりやすく言うと、中学・高校で決して同じグループに交わらないタイプです。
趣味趣向が違う価値観を持っている場合は、意外とうまく行くもんです。
しかし、どちらが駆動輪か補助輪かの区別ができないままでいると対立が始まり、
お互いが苦しみあうことになります。
義兄は生まれ持った運の強さがある人だと思っていました。
何事にも抗わない、争わない、焦らない、気にしない、自然体でスイスイ泳いでいく。
そんな感じです。
いつも自然体で振る舞う義兄を僕は表面に出さないよう畏怖を持って見ていました。
穿った見方をすれば、いつも外側からお客様でいるように見えたりもしたのです。
状況を俯瞰し、不利な場合はお客様のよう傍観したり、好転してくると真ん中に座布団敷いて、
どてんと腰掛けるそんな感じです。
だから私は義兄に必要以上の抵抗となにか変な違和感を感じると同時に、
直系と傍系の違いを肌感覚で感じ取っていました。
さて、実の親子と義理の親子の関係を見てみましょう。
まず、最も多くの後継者が避けられないでいる親子の確執があります。
実の親子であれば、一番カチンとくることを一番カチンとくる最悪のタイミングで言ってしまう事です。
お互い遠慮なしの連打の応酬です。
ところが、これが実の親子でない義父と娘婿の関係というと、
どうでしょう、どちらかというと上司と部下の関係に近い。
礼節をわきまえた一定の距離感は常に保たれていて、
広義の意味では親子だけれど、れっきとしたビジネスパートナーです。
ビジネスだけでなく、プライベートでも他人行儀なところはあれど良好と見えました。
また、娘婿という立場は、創業家(直系)ではない他所者(傍系)という、
無意識からくる遠慮や低姿勢な態度がさらに社員の好感を生むのではないかと思っています。
これは実子であろうと娘婿であろうとその人のキャラクターの問題なのですが。
ただ、実子から見て娘婿に容認できない感情が一つだけあります。
変幻自在の立場です。
娘婿というのは50%は言い過ぎかもしれませんが、
少なくとも25%くらいは社員サイドにいるという心理が働くのではないかという事です。
その場の状況で自分の立場を社員側にしたり、経営者側にしたり使い勝手の良いリバーシブルになれるのではないでしょうか。
役員会では経営者サイドで積極的に社員を査定する。
その30分後には喫煙所で社員の会社批判に耳を傾ける。
残念ながら、実子である経営者の息子は労務管理上は社員であっても入社したその日から経営者側なのです。
社員とは物理的に距離を近くしても、そっちの世界には入れない。
娘婿と決定的に違うのはこの点だと思います。
もちろん、この点で議論しましたが、永遠に交わることはありませんでした。
以上のような経験のもと、私のような軋轢を軽減するものとして次のような対策が考えられます。
継ぐ継がないは結果が決める。
実子だろうと娘婿だろうと、しのごの言わずに目の前のこと一生懸命やっていれば結果はついてくると思うのですが、
同族の人間関係は一筋縄ではいきません。
ある時点でお互いの進路を見直しておけばまた違った人生がそれぞれに訪れていたと思います。