先代の想いの継承って何だ?

2020.09.22

事業承継は「資産の承継」や「経営の承継」、また「精神の承継」などとも言われます。

後継者はこれらを後世に継ぎ、守っていくと表現します。

守って、託して、次世代に継なげる。

しかし、今はこの継具という守り方に思考の変化が求められているように思います。

事業承継は住宅リフォームに似ている

よく事業承継は色んな事象に例えられます。

この事業承継の難しさを住宅リフォームに例えられた文献を以前読んだことがあり言い得て妙だなと感じ入ったことがあります。

創業者は「自分の好きな場所」に「自分の思い描いた設計」で、あるいは「その時代に流行ったデザイン」を取り入れて建築します。

後継者の場合はそうではありません。

決められた場所で、既存の会社という箱があり、先代の商売や顧客があり、その型枠に自分をはめ込んでいくことに窮屈さや違和感も感じます。

しかし、柱一本から自分で建てていく事を考えたら、はっきり言って今ある家に住んでしまった方が楽なわけです。

住んでいる人は同族も含め、従業員もいます。

後継者よりも長く住んでいて居心地が良いと思っている従業員もいます。

後継者にとってみたらあちこちの綻びが気になったり、従業員に対する福利厚生や作業効率も考えて部屋の間取りを変えたり、補修すべき部分は改修しないといけません。

 

先代(時代)との価値観の違い

後継者と先代の想い(価値観)の違いは時代背景にも関係してきます。

リフォームで例えましたが、家屋の真ん中を占拠している週に一回ほどしか使われないオーディオルームがあるとします。

70年代は音楽鑑賞が最大の娯楽でしたので重厚なオーディオルームがある家は少なくありません。

後継者はそのオーディオルームの壁をぶち抜いてオープンフロアのアイランドキッチンにしたいと考えます。

このように時代の流れを考えながら刷新を行いたいのですが、残念ながら先代の所有物でもあるので好きなように振る舞い勝手に修繕するわけにはいきません。

創業者はオーディオルームを残したい、後継者はアイランドキッチンにしたい。

例えはそれぞれ違いますが、経営方針もこのような違いで両者がぶつかることは多いです。

両者が本当に求めているのは何でしょう。

 

先代の思いは時代遅れなのか

よく後継者セミナーなどで「先代の想いを継承しよう」とよく言われます。

私はいつも疑問に思っていつか質問してみたいのですが、先代の想いって何でしょう?

私の後継者時代に親父に尋ねたらたぶん返ってくる言葉は「うるせー、一生懸命やりゃ良いんだ」です。

この先代の想いって、実は先代も後継者も言語化できないと思います。

先代の想いとしては、一生懸命に作って利益を出して社員や株主に還元していくこととされるようですが、作るという手段の部分ではなく、実は本質の部分は真剣に考えたことはあまりないのではないでしょうか。当時は作ればどんどん売れる時代でしたからいちいち本質なんてめんどくさいこと考える余裕もなかったのです。

そして時代は後継者に変わり、この本質に気付こうと求め始めるのです。

今までと同じやり方を刷新しようとする。

先代は過去の成功体験にすがりたい。

先代の想いを継承しろと教育されてきた。

何か違和感がある。

 

後継者が引き継ぐもの

先代の事業は製造業です。

取引先から注文が入り、仕入れて、作って、決まられた納期に決められた数量を納めて、計画通りに販売されていく。資金がショートしそうになると融資が実行される。昭和の製造業はうまく循環してきました。

このうまく循環した流れに乗りながらも、経営者はいつも利益優先という側面も忘れません。しかし、利益追究だけではなく、物を作って売った利益が従業員や取引先という利害関係者の生活を豊かにし地域や社会に貢献したい思いがあったはずです。

「明るい豊かな社会を築く」というと、なんか胡散臭い宗教みたいですが、自社のビジネスをもう少しマクロ目線で俯瞰していくと一人の人生という舞台に行き着きます。

後継者は先代が残した仕事を通して、世の中に必要とされ喜ばれる価値を実感することです。

ですから、このマクロな部分で繋がっていれば方法が多少違えど思いは同じだと思います。

 

時代が変わって、価値観や方法が変わっても快適な時間を共有したい思いは同じです。

 

本来の住むという目的はそこに住む人たちが快適で心豊かな時間を過ごす事です。

 

先代の残した商売も社会に必要とされ喜びを与えたいという先代の想いを受け継ぐということです。

 

先代の想いを継承するということは、後継者が現代の価値観や手段は変えていっても根底にある変わらぬ想いを受け継ぎ共に歩む社員や利害関係者と共有していくことが重要です。