コロナ禍で事業承継はどう変わるか

2020.09.26

事業承継には3つの視点があると以前お話ししました。

  • 民法
  • 会社法
  • 税法

この3つを受け入れていかないと事業承継は上手く進みません。

しかし、もう一つ重要な視点があります。

  • 信託法

2006年に信託法が大改正されて、それまでは信託銀行や信託系の企業にしか使えなかった商事信託に加えて、家族や中小企業でも使える民事信託として改正されました。

 

円滑な資産の管理と承継を阻むもの

まず、民法で定められている法定相続(遺留分)ですが、平等を原則にしている民法では親不孝者や会社に全く関与しない相続人に株が分散され、経営の安定を保つことができません。

次に会社法での株式制度ですが、少数株主と時代遅れな名義株主です。つまり、1990年以前は、「株式会社を設立するときは最低7人の発起人が必要」とされ、代表取締役を含めて8人の株主が必要でした。つまり、書類に必要な便宜上の株主が必要でした。その便宜上の株主が放置されそのまま滞留している状態です。この不十分な株式制度 のために合意が必要な時に決議できないという問題があります。

税法ではどうでしょう。今まで多額の法人税を納付し、内部留保という資産に課された非公開株の価値評価が上がりそこにも課税されます。

 

新しい承継の手法

時代が変わり民法に頼る相続がすでに限界がきているのではないでしょうか。法律が財産の承継先を限定してしまう制度はこれからの経営において多様な承継が論じられるべきです。また、後継者不足に拍車をかけたコロナの影響で大きく家族や企業に関わる人間関係も民法の範囲だけでは把握できない新しいカタチになってきていると思います。

 

そこで信託を使って様々な事情を抱える企業さまに合わせたスキームを考えていきたいと思っています。

 

事業承継に困っているのは株価の高い会社だけではない

事業承継に対する意欲をマトリックスを使って4分類した図があります。

上記の図でもお分かりの通り、Ⅲのグループに様々な問題が隠れていそうです。

そのまま放置していたら廃業に近いグループです。

このⅡもしくはⅢのグループの信託を活用した事例を紹介したいと思います。

 

株価が低いうちに長男に株を移したいが時期尚早だ。まだまだ現役として頑張りたい。

株価の問題はさておき、多くの経営者は息子に株(財産・経営権)を移さないといけないのはわかっていても、特に経営権を全て移してしまうと後継者が図に乗って経営が危なくなるとか、自分の居場所がなくなるなどお悩みは色々です。一度、後継者である息子に株が移ってしまうと、その後に「経営者不適格」として烙印を押された場合、渡った株を取り戻すのは税務面からみても非効率です。

会社法上の種類株式を利用して、拒否権付株式に変更するスキームもありますが、資産規模もそこそこあって株主総会や取締役会を定期的に行なっている企業ならいざ知らず、見掛け株主総会・取締役会がほとんどの中小企業で種類株式の話をしても「そんな大袈裟なこといらんわ」と経営者から拒否されることが多いです。

 

そんな場合におすすめなのが家族信託を事業承継に活用した事例です。

  1. 経営者の父親が長男に全株を贈与します。株価が低いので後継者である長男への贈与税負担は低くすみます。
  2. 次に長男が委託者兼受益者・父親が受託者となって双方で自社株を信託する株式信託契約を締結します。
  3. 将来、そろそろ完全引退としたところで信託契約が終了して、権利が長男に移行して事業承継が完結します。

 

これなら、議決権や配当も受託者の父親が持つことになりますので支配の維持や後継者の暴走を未然に防ぐことができます。

 

父から貰って、息子が託すという裏ワザな方法ですが、会社の数だけ事業承継の手法は様々です。

親族や株主、景況の事情によっても大きく変わってきます。

特に最近ではコロナの影響で経営者の危機意識も変わってきており、できる限り早いうちに事業承継を始めておきたいと感じている経営者が増えてきております。

 

しかし、どんな状況においても事業承継は焦らずはじっくり取り組んでいきたいものです。