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あなたの株を30年分で買わせて下さい

2020.09.07

お知らせ

平成2年以前に設立された中小企業には名義株主という存在があります。なぜなら、株式会社を設立するにあたって7人の発起人が必要で、起業しようと一念発起しても、資金も実績もないところに7人の有志を集めるのは大変なことです。ですから、名前だけ借りる名義発起人(名義株主)が必要でした。

名義株主から買い取る

前社でもやはり名義株主はいました。ほとんど顔を合わせることのない先代のお付き合いのあった老夫婦に少数の株が渡っていました。経営に口を挟まないだけマシでしたが、配当は当然のようにしっかり要求してきます。当然といえば当然なのですが、経営に全く興味がなく、額に汗して絞り出した利益を、さも当然のように要求されると「カチン」ときたものです。逆に配当しか興味はなく、かと言って配当アップの要求もないので紳士的といえばそうなのですが、一つだけ厄介な事実があったのです。

厄介な相続人

老夫婦には二人の息子がおり、この長男が素行が悪く定職にも付いていません。前に一度この老夫婦から「雇ってくれないか」との相談を受けましたが、やんわりとお断りしたことがありましました。その時初めてこの厄介な息子の存在を知り、自社株がいずれ相続されて、こいつが経営に絡んでくるのはめんどくさいと思ったことが買取りのきっかけでした。

この老父婦と自社株の買取交渉を始めたのがこの事実を知ってから半年後です。その老夫婦は12株所有してました。額面5万円の株をほぼ毎年10%配当をしていましたので金額にして6万円です。手取りで4万8千円ほどになります。大した金額ではないのですが毎年決まった時期に定期的に振り込まれるのは悪い気はしないはずです。さて、どうやってこの株を買い取るか。

言い値と評価額

中小企業の譲渡制限付株式には価値はあっても売買価格はありません。一般的には評価額が基準となって収める税額が決まります。「双方の協議で売買してもいいけど、ちゃんと申告してね」が国税局の言い分。ここさえクリアすれば問題ないのですが、なかなか一筋縄ではいきません。

株価は売り手と買い手の双方と他株主との合意で決定します。老夫婦は80歳。私は交渉の切り口として彼らの寿命を100歳と多めに見積もって20年分。さらにプラス10年の合計30年分で買い取りさせて欲しいと交渉しました。さらに今のところ経営は順調だけど10年先はわからない。配当どころか会社が存続することさえ確かではないし、毎年配当を受けるよりも今のうちに現金でまとめて受け取った方が安心だとお勧めしました。

30年*6万=180万円です。ところがこの言い値交渉にすると国税局で定めた株式評価(純資産評価+類似業種批准評価の平均)が自社株の価額となります。なんと額面5万円の自社株にプレミアがついて20倍もの価値になっていたのです。ですから、購入額や基礎控除などを差し引いて最終的にかかってくる贈与税は約180万円。売買額の原資180万円と足すと360万円となる!ちなみにこの場合の贈与税率は40%。売買額を言い値にすると、プレミア評価額と言い値の差額が課税対象になりますから注意が必要になります。

私としては老夫婦の歳を考慮するとなるべく早く、相続が発生する前にこの株を処分しておきたい。上記のように一発で処分するとなると原資と税金で360万円になる。3年かけて処分するのはどうだろう。60万円の3回払いでシミュレーションすると控除はつかなくなるが贈与税は18万円。そうすると78万円。それを3回繰り返すと234万円。

 

一括処理が360万円なのに対し、
3回処理は234万円。
その差額126万円。

 

言い値で買い手は同意するか

この差額に126万円。しかし相続が3年の間に始まったらどうするとか、息子がこの話を聞きつけて不当な要求してこないとも限らない。126万円の税金は精神安定代と考えればどうだ?う〜んやっぱり高い。しかし株が息子に渡ってしまうことを考えると確実に安い。

信託という方法も考えましたが、今同意しようとしている老夫婦を喚起させるような刺激は与えたくなかった。3年間何も起こらないことを願って分割にしました。

老夫婦も3分割の割増なしの価額で合意してくれました。なにも私の交渉力が偉いのではない。老夫婦がおっしゃるには、今はなき創業者に大変お世話になったし、この株は自分で購入したものではなく創業者が譲ってもたせてくれたものなんだと、それを蝕むような事はしたくないと当時の思い出を語ってくれました。本当に創業者には感謝します。

この老夫婦のように紳士的であれば問題はありませんが、厄介な方もいらっしゃいますので注意が必要です。後継者のみなさんはこの機会に自社の株の確認と整理を先代様とよく話し合われてされることをお勧めします。

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