困った古参役員

2020.12.30

咲山工場長。

数少ない前社のプロパー役員。

高専(工業高等専門学校)を首席で卒業して、

新卒で入社し、40余年。

 

彼は生まれも育ちも京都府なのですが、

言葉は名古屋弁です。

そうだにゃ〜(そうですね)

あんたは何だわいな〜(なんなのですか)

 

京都の北部に網野という地域があります。

丹後ちりめんが有名な地域で、

男はつらいよ 「寅次郎あじさいの恋」

がロケ地になった70年代は隆盛を極め、

ひと織り1万、ガチャマンと揶揄された時代がありました。

 

室町幕府の守護大名で足利の支族である一色氏が、

三河国(愛知県岡崎市)を本拠地としており、

のちに丹後を支配し住み着いた。

江戸後期には豊田織機の職人が織物技術とともに、

丹後に移管される事で名古屋文化が定着したとも言われています。

 

この咲山工場長は地頭は良くて、

憎めない性格ですが、

残念ながら管理職には最も向かない人であるというのも、

間違いないです。はい。

 

バンバン、盲印押しまくって。

工場掃除するんでルンバ買ってくれって。。

工場長が言うか、それ。

 

一番、困るのは現場で起こった事故などを報告しない。

会社にとっては小さなことでも、

今摘んでおかないと取り返しのつかないことってありますよね。

そう言うのを無視する、

と言うか気がつかない。

 

極め付け。

咲山工場長、社用車をぶつけた。

ボディ右側がボコって凹んでる。

塗装の剥がれ具合から、そんなに古くない傷。

それにたまたま気がついて、

内線で、

「ちょっとお話があるんで来てもらえませんか」

と呼んだら、

スキップして鼻歌交じりに、

小躍りしながら、

社長室に入って来た。

 

「なんか楽しそうですね。ところで咲山工場長、

なんか隠してません?」

 

「何だわいな? なーんも隠しとらんのだわいな」

 

「車、ボディ凹んでますよね」

 

「あー、あれはにゃ〜」

 

彼は嘘をつく時、眼が泳ぐ。

追求すると、

コンビニの駐車場で他車に当てたのだと白状した。

 

「それ、当て逃げじゃないですか!」

 

なんと、被害者に謝って許しを得たのだという。

当然、事故証明取ってないので保険の適用外だ。

塗装が剥がれたところはどうするつもりだったのか、

と確認すると、

タッチアップペンで塗り潰すつもりだったと言っていた。

 

私はその場で工場長と役員を辞めてほしいと告げた。

株は3年かけて自分が買い戻すことも約束した。

もちろん、なぜ、辞める必要があるのかもはっきり伝えた。

 

入社してから40余年。

片道70km離れた町から2時間かけて通勤し、

我が社の発展に寄与してくれました。

そして、必死で先代を支えてくれた恩人であります。

 

でも、抑えきれなかった。

あの時は。

もう少し、

自分に寛容さと言うものが備わっていたなら。

でも、無理だった。

 

咲山工場長の目が充血し、

天を仰いで涙がこぼれ落ちるのをこらえていた。

その姿に、一瞬、ドキッとしたが、

支配した気になっている自分がいたことを、

否定できないでいるのも事実。

 

それから、嘱託社員で少数株主の咲山氏。

総会の数日前、咲山氏を呼んで、尋ねてみた。

彼は嘘をつく時、眼球がぐるぐる泳ぐ。

 

「咲山さん、ちょっと噂で聞いたんですけど。

今度の株主総会でなんか企んでません?」

 

「なんだわいな。なんも企んどらーんのだわいな」

 

「いや、私を追放する計画があって、

株主の票を集めてるって話を聞いたんですけど。知りません?」

 

「知らんわいな、、」

 

やっぱり。

なんかある。

いつもより、彼の目が豪快にぐるぐる泳いでいた。