事業承継3つの目

2020.08.15

株式会社において、その会社のオーナーは代表取締役ではありません。

株式の議決数(一般的には株式数)を過半数所有している人がオーナーです。

 

息子である後継者に代表取締役の肩書きだけ譲って、株をそのまま保有しているケースは少なくありません。

後継者も名刺の肩書きが変わったので、事業承継も片付いたと勘違いされてる方もいらっしゃいます。

肩書きよりも自社株です。

 

しかし、多くの同族経営ではこの自社株問題を後回しにされる傾向が強く見られます。

事業承継においては後継者に自社株をどのような形で、どのタイミングで引き継がせるかは最も優先される問題の一つです。

 

自社株問題が遅れる理由

  • 先代社長が手放したくない
  • 承継資金の問題
  • 少数株主との調整がめんどくさい
  • 専門的な知識などが株主間で理解されにくい
  • 喫緊の課題ではないという心理的な余裕感

 

以上の理由を解決する上で注意しておきたい2点を紹介します。

権力と財産である「経営の承継」と「資産の承継」自社株を後継者に引き継ぐ際にこの2点を意識するといいでしょう。

しかしこれら二つの承継はプラス面とマイナス面が相対することも忘れてはいけません。

 

経営の承継

株式による所有権および議決権。

可能な限り株式を後継者に集中させる。会社法からみた権力の集中化です。

 

資産の承継

相続財産の承継とも置き換えられますので、税負担や他相続人との調整が必要になります。

これら相反する課題をバランスよく対応していくためには次の3つの視点が必要になってきます。

 

事業承継の3つの目

 

①会社法からの視点(議決権の確保対策)

②税法からの視点(相続税や納税資金対策)

③民法からの視点(遺産分割・遺留分対策)

 

①会社法からの視点

後継者に集中させるか兄弟で分散させるかの視点で考えます。

 

・後継者に集中させる

後継者に権限を集中させて責任と迅速な意思決定、何より経営の安定を持たせるのが王道です。

少数株主も含めて、この際分散した株をまとめるには根気のいる地道な作業になりそうです。

できれば先代社長が元気なうちに一気にまとめて後継者に集中させることにより組みに入る必要があります。

 

・等しく分散させる

兄弟が仲良く経営に参画しているのなら大した問題にはなりません。

むしろ、3人揃えば文殊の知恵と言われるほど、これ以上ない強靭な結束と信頼の連携を持っています。

しかし、現実には仲のいい兄弟でも相続権のない配偶者が関与したり、

その兄弟の子供らが成人すると今まで仲の良かった兄弟の絆も雲行きが怪しくなってくることがあります。

また、一度株式を分散させてしまうと再度集中させることは容易ではありません。

 

種類株式の活用

兄弟間で調整がうまくいかず、等しく分散させる場合に活用したいのが「種類株式」です。

例えば、先代社長所有100%株式を相続する場合。

長男33.3株  普通株式 議決権100

次男33.3株 配当優先株 議決権0

長女33.3株 配当優先株 議決権0

 

以上のように定款を変更することで株式の配分は均等出会っても議決権の数を変更して、

後継者に経営権を持たせる手法があります。

 

株式信託の活用

先代社長にしてみれば、後継者に株を譲って対策したい気持ちがある反面、まだ権力は持ち続けたいとか種類株式や黄金株を持っても質量的な古い固定観念をお持ちの先代経営者は多くいらっしゃいます。

先代経営者が経営権を握ったまま後継者に株式を譲渡できるのが株式信託です。

先代経営者が自分自身を受託者とし、後継者を受益者とします。

先代経営者が自身で自社株を管理し、その議決権を行使することができます。

受益者の後継者はこの時点で株式は取得した状態ではありませんが、先代経営者の死亡後この信託は終了することになるので、後継者は株式を取得することになります。

これは信託の手法の1つの例ですが、このように経営権を握ったまま後継者に株式を譲渡することが可能になります。

詳しくは株式信託について書いてます。

↓   ↓   ↓

https://www.egbo.jp/blog/%e6%a0%aa%e5%bc%8f%e4%bf%a1%e8%a8%97%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%86%e6%96%b9%e6%b3%95/

 

②税法からの視点

税法の対策は後継者が自社株を相続する際に課される相続税の負担を軽減させることを目的とします。

自社株を相続した場合、いくらぐらいの相続税が課せられるのか知るために、

現在の自社株の価値がどれくらいあるのか認識する必要があります。

 

自社株評価を知ろう

評価方法としては一般的によく知られる方式として、

・純資産価額方式

・類似業種批准方式

・併用方式

どの方式を使うかは業界やその企業規模にもよりますので一概には言えませんが、

中小企業の多くは類似業種批准方式を採用しているところを多く見かけます。

 

事業承継税制の活用

平成30年度の税制改正により、経営承継円滑化法が見直されました。

事業承継税制の特例が設けられ、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの贈与・相続に関しては次のような特例措置が適用されたのです。

①対象株式数上限等の撤廃

これまでは納税が猶予される株式は全体の3分の2までが対象でしたが、100%が対象となりその結果事業承継時の贈与税・相続税の負担はゼロになりました。

 

②雇用要件の緩和

これまでは事業承継後5年間で平均8割以上の雇用を維持することが求められました。

この8割が高いハードルとなり、この制度が敬遠される所以にもなっていました。

 

③対象者の拡充

これまでは1人の先代経営者から1人の後継者へ贈与・相続される場合のみ提要されましたが、親族外を含む複数の株主から最大3人までの後継者への承継も可能になりました。

しかし、実際は親族外が特定の後継者にこのケースを使うのは現実的でないように思われます。

親子という血縁で無償で株が引き継がれるのであって、血縁関係のない株主がこの制度をそのまま使うのは危険です。

複数から複数あるいは特定された後継者に移動するためには、承継前に十分な話し合いと設計が重要です。

 

③民法からの視点

事業承継における民法対策については大きく遺産分割と遺留分の2点です。

この対策については大変デリケートでスキルやノウハウばかりに頼るわけにはいきません。

 

後継者以外の相続人への尊重と配慮を持ってトラブルを避けなくてはいけません。

例えば、長男である後継者は全株式を承継し、次男は土地や建物など不動産を、

長女は現預金というように家族全員の納得感が必要なのです。

相続人の配偶者も含め、全員が満足いく分割案はありません。

後継者である長男が相続する自社株がその遺留分を超える場合には、

次男、長女から遺留分侵害請求を出される可能性があります。

 

まとめ

事業承継前に意識する

「経営の承継」と「資産の承継」の権力と財産です。

事業承継開始に当たって意識する

①会社法からの視点

②税法からの視点

③民法からの視点